クソ複雑な数式は許しても、VBAは許せ ないって、、、なぜ?

『VBA は怖い』という思考停止が、静かに日本企業を腐らせていく

日本超大手企業の「VBA 禁止」が招く絶望と思考停止

「VBA禁止」という言葉を聞いて絶望するSmall AI Japan。日本の超大手企業の  現場を象徴するイラストレーション。

打ち合わせ室に漂う緊張感の中で、私はその言葉を聞いた。

日本を代表する——本当に、日本を「代表する」と胸を張れるような——超大手企業 の管理会計システム再構築プロジェクトに関わることになった。

何千億という資金が 動き、何万人もの従業員の生活を支え、日本経済の根幹の一部を担うその企業の経営 企画の担当者が、こう言ったのだ。

「VBA は使わないでほしいです。ブラックボックスになりますので」

私は、表情を変えないようにするのに、全神経を使った。

この言葉を、私は何度聞いてきただろう。

地方の零細企業はもちろん、そこそこの規模の中小企業でも聞 いてきた。

だからある程度はアンチVBAに対して「またか」と思う免疫もできてい た。

しかし、このときばかりは違った。

日本のトップに立つ企業が、いまだ にこのレベルなのか。。。

絶望という言葉は、軽々しく使いたくない。

しかしあの瞬間、私の中で何かがゆ っくりと、音もなく崩れていったのは事実だ。

証券会社で直面した低レベルなアナログ作業をVBAで自動化したら、、、

熱狂的なAI Japanが、時代遅れの証券会社の業務を目の当たりにし、怒りと絶  望で顔を歪めている様子。VBAによる自動化の重要性を訴えるイメージ。

その時、思い出した話がある。

私がかつて、最大手証券会社に勤めていたときのことだ。

担当していた業務は、 有価証券届出書および有価証券目論見書の制作。

誰も読むことはないが、金融商品取 引法の規定により、作らざるを得ない、誠にくだらない書類である。

それは無能な金融 庁の問題なので脇に置くが、法律・規則と数字が複雑に絡み合い、一文字のミスが会 社の信用を根底から揺るがしかねない、極度の緊張を要する仕事だった。

その業務の中でも、とりわけ神経をすり減らしたのが「日数のカウント」という 作業だった。

「発表日から何日後」
「払込日から何日以内」
「権利確定日の何営業日前」

カレンダーベースの計算と営業日ベースの計算が入り乱れ、また初日不算入の場合とそうでない場合もあり、少し気を抜けば 1 日ズレる。

たとえ一ヶ所でも間違いがあれ ば、再提出になり、証券会社としての信用はガタ落ちだから、極めて重要な意味を持 つことになる。

部内での手順は、こうだった。

二人の担当者が、卓上カレンダーを前に一人が指差し、もう一人がカウ ントする。

「1,2,3,4,5,6,7,8,9,10。6月6日ですね。」声に出して確認し合いなが ら、3 時間かけてドラフトを仕上げる。

信じられるだろうか。

21 世紀の、日本トップクラスの金融機関で行われていた光景だ。

一応、国内最大手の証券会社。

その社内でも相応の事務処理能力に長けた人員が 集められた部署なのに、こんな超アナログが幅を利かせていた。

不効率が嫌いな私は、居ても立っても居られなかった。

仕組みを作るのは大変ではあるが、VBA を使えば、この作業は「一瞬」で終わ る。

日数の定義を正確にコーディングし、祝日/営業日データを組み込めば、どんな複雑な日数計算も、ボタン一つで誤りなく算出できる。

ヒューマンエラーはゼロに なり、3 時間が 5 秒になる。

私は半日がかりで仕組みを作り、上司に進言した。

自分の中では「絶対に正しい改善」だとい う確信があった。

そして——返ってきたのが、例のあの言葉だった。

「エクセルは間違えることがあるから必ず目視で確認して下さい」
「VBA はブラックボックスで危険だから採用しない」

腸が煮えくり返る、とはああいう感覚を言うのだろう。

Excel が間違えるのではない。

作った人間が間違えているのだ。そんな奴と俺を一 緒にするな!。

そして、「人間が間違えること」を前提に設計された 3 時間の手作業こそ、最大のリスクではないのか。

なぜそこに気づかないのか?

なぜか「自分が理解できないVBA=悪いもの」という、子どもじみた論理が、年収数千万円の自称金融プロフェッショナル の世界で堂々とまかり通っているのだ。

その時、「この会社はバカばっかり」と愛想が尽きた。

VBA を禁じた結果生まれる「透明なブラックボックス」の地獄

「VBA禁止によるスパゲッティ数式」という地獄絵図を表現したイラスト。複雑  な数式が絡み合うExcel画面と、恐怖に顔を歪めたプログラマーが描かれている。

では、VBA を禁止した組織の現場はどうなっているか。

想像してほしい。

あなたが受け継いだ Excel ファイルを開く。

そこには、セルの 中に延々と続く数式がある。

IF 関数の中に IF 関数が入り、その中にさらに IF 関 数が埋め込まれ、そこに VLOOKUP が絡み、、、そんな「呪文」のような一行が、罪 もなく白いセルの中で息をひそめている。

複雑に絡み合い、スパゲッティ数式と呼ばれたりするが、こ んな数式、解読する気にもならない。

それだけではない。

外部の Excel ファイルから情報を引っ張るために、いくつものリンク式が縦横無尽に張り巡らされ、何度も「リンクを更新しますか?」と 更新を待たされる。

「リンク先のファイルが見つかりません」そんなエラーも、日常茶飯事。

あなたも心当たりがあるだろう。

でもこれはVBA を使わないからブラックボックスで はない。

「安全な Excel」の末路だ。

問いたい。「数式が目に見えるならブラックボックスではない」のだろ うか?

VBA ならば、適切にモジュールを分割し、コメントを丁寧に残せば、後から担当者が変わっても、ロジックを一行ずつ追いかけることができる。

「この変数は何を意味するのか」「なぜここでこの処理をするのか」を、日本語で書いて残すことができる。

だが、セルに埋め込まれたスパゲッティ数式には、コメントを入れる場所すらな い。

解読するには、まず全体像を把握しなければならない。数式の中身を把握するに は、深呼吸して項目を一つ一つ、ひも解く必要がある。

私の考えでは、解読困難な長 い関数のほうがよっぽど罪深い。

VBA を禁じてスパゲッティ数式を見逃す。

それは「ブラックボックスの排除」ではなく、「ブラックボックスの隠蔽」だ。


AI 時代において「プログラミングがわからない」は言い訳にならない

「プログラミングがわからない」という言い訳をAI技術で吹き飛ばすSmall AI   Japanの衝撃的な姿。未来への転換を象徴するイメージ。

確かに、かつては VBA に一定のハードルがあったことは認める。

「For 文って 何?」「変数の宣言って?」——プログラミングに触れたことがない人間にとって、そ れは異文化との遭遇に等しかった。

自動化に強い興味がある一部の人間の専売特許だ ったかもしれない。

しかし、今は令和だ。2026 年だ。

AI に「営業日を計算する VBA を書いてほしい」と頼めば、10 秒でコードが出て くる。

「このコードを日本語で一行ずつ説明してほしい」と頼めば、懇切丁寧な解説 が付いてくる。

「もっとシンプルに書き直してほしい」と頼めば、即座に改善版が返 ってくる。

プログラミングの「わからない」を埋めるコストは、かつての 1000 分の 1 以下 になった。

にもかかわらず「VBA はブラックボックスだから禁止」と言い続けることは、も はや合理的な判断ではない。

それは端的に言って、「新しい技術を学び、業 務を改善しようとするプロとしての意志の欠如」だ。

道具を学ぼうとしない自分を正当化するだけの行為だ。

繰り返す。「VBA が悪い」のではない。

属人化を放置し、コメントも書かず、引き継ぎドキュメントも作らず、 理解できない人間が生まれても放置し続けた「運用の怠慢」が悪いのだ。

世界との差を生む「思考停止」という日本企業の最大のリスク

私が声を大にして言いたいのは、このことだ。

日本の上場企業が、会議室で「VBA は怖い」と肩を寄せ合っている間に、世界中 の企業は AI を使って業務を自動化し、人間にしかできない仕事に集中し、生産性を 指数関数的に高めている。

自分が理解できないものを排除し、非効率な手作業に「安心感」を覚え、変化を 拒むことで「リスクを回避した気」になる。

その「心地よい停滞」の中に居座り続け る組織に、未来があるとは私にはどうしても思えない。

「VBA 禁止」というルールは、リスクマネジメントの産物ではない。

それは、 「私たちは理解できないものから目を背け、思考することをやめました」と いう、組織としての白旗だ。

誰かがそれを、はっきりと言わなければならない